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Unit 02 キックオフペーパー: 農業政策の論点

東京大学大学院農学生命科学研究科教授 本間 正義 

  日本農業が変わろうとしている。TPP交渉の行方にかかわらず、日本農業は新たな生き残り戦略を練り、21世紀型ビジネスモデルを構築しなければならない。それは、長らく続いた戦後農政からの転換というよりは、戦後農政の基礎が戦時体制にあったという意味では、戦時体制を作った「1940年体制」からの脱却でもある。

 実際、長らく続いた、自民党・農水省・農協という「鉄のトライアングル」体制が崩れつつある。昨今のコメの減反政策の見直しや農協改...

Unit 02-B: 農政アンシャン・レジームからの脱却

キヤノングローバル戦略研究所研究主幹 山下 一仁 

1.農業衰退の原因

  農業が衰退している。特に、米が著しい。農家の7割が米農家なのに、米農家は農業生産の2割しか生産していない。これは、米農業が零細で非効率な農家によって行われていることを示している。
 戦後農政の特徴は、米価によって農家所得の確保を図ろうとしたことである。政府が農家から米を買い入れた食管制度のもとで、1960年代以降、JA農協(農業協同組合)は米価闘争という大政治運動を展開した。自民党の支持基盤である農村を組織する農...

Unit 02-A: 新しい農業ビジネス

経団連21世紀政策研究所研究主幹 大泉 一貫 

  日本農業の産出額を高めるには結局のところ産出額の大きい一部の農業経営を増加させるしかないと私は考えている。わけても販売額にして5千万円以上の売り上げをあげる「先端的経営」への期待は大きい。彼らは農家数の1%に満たないものの、わが国農業の3分の1を産出している。
  彼らのビジネスは、「6次産業化」「農商工連携」「インテグレーション」「契約栽培(計画生産)」など様々なネーミングでいわれているが、ベースとなっているのはマーケットニーズに基...